アニメ番組の“打ち切り”パターン

アニメ番組に関して、“打ち切り”という言葉から思い浮かべる状態って、実はその人が住む(住んでいた)地域によって、なかなか大きな差があるように感じられます。
例えば、関東地区でずっとアニメを見ている視聴者であれば、“打ち切り”といえば、視聴率不振などのために番組が終了すること、という印象が一般的ではないでしょうか。(アニメ以外の番組となると、話はまた違ってきますが…)
一方、主に民放4局以下の地域をよく知る視聴者の中には、まだまだ続きが制作されているアニメが、局の都合等で突然に放映終了してしまう事態を思い浮かべる方が、少なくないことと思います。

ここでは、大都市圏の局ではなかなか見られない地方局の“打ち切り”や、逆に深夜アニメを多く放映する大都市圏ならではの“打ち切り”などのパターンを取り上げていきます。

番組の放映形態を、色分けで表現しています。
キー局同時ネット週遅れ放映本放映終了後に放映再放映放映打ち切り

地方局編(1) 全国ネット枠の“左遷”

ゴールデンタイム等の全国ネットで放映されていた番組が、キー局の方針で途中からローカル枠での編成に移行することがあります。
一般的に、視聴率不振等の理由で“左遷”されるケースが多いようです。
このようなケースでは、ローカル編成で番組を継続することができず、番組を打ち切ってしまう地方局が出てきます。
放映を継続する局でも枠移動が発生するので、地方のアニメ事情にあまり詳しくない方でも、イメージしやすいパターンだと思います。

以下のデータは、『探偵 学園 Q』に関するものです。
『探偵 学園 Q』は、2003年4月〜9月に全国ネット(TBSテレビ発・TBS系、火曜18:55枠)で放映された後、2003年10月からはローカル枠に移動しました。
この関係で、それまでは同時ネットで放映していたネット局の多くが、週遅れ放映への移行や放映打ち切りとなっています。
データには、2003年9月までキー局同時ネットで放映していた局の、全国ネット枠終了後の動向を掲載しています。

なお、全国ネットの最後の放映の時点では、キー局(TBSテレビ)以外での放映継続は決まっていませんでした。
同時ネットしていた系列局のラ・テ欄には、全ての局で“[終]”の表示がありました。
また、TBSテレビのみ、番組中にスーパーで放映枠移動を告知していました。

放映局対応
TBSテレビ土曜17:30枠で放映継続。
北海道放送放映打ち切り。
青森テレビ放映打ち切り。
IBC岩手放送放映打ち切り。
東北放送日曜02:10枠で放映継続。
テレビユー山形放映打ち切り。
テレビユー福島日曜06:15枠で放映継続。
新潟放送火曜02:17枠で放映継続。
信越放送放映打ち切り。
テレビ山梨水曜01:20枠で放映継続。
チューリップテレビ土曜05:30枠で放映継続。
北陸放送放映打ち切り。
静岡放送土曜02:15枠で放映継続。
中部日本放送日曜06:00枠で放映継続。
※その後、再びシリーズ途中で放映を打ち切った。
毎日放送放映打ち切り。
山陰放送放映打ち切り。
中国放送放映打ち切り。
テレビ山口月曜02:45枠で放映継続。
山陽放送土曜06:00枠で放映継続。
あいテレビ放映打ち切り。
テレビ高知木曜16:25枠で放映継続。
RKB毎日放送火曜02:25枠で放映継続。
長崎放送土曜07:00枠で放映継続。
熊本放送学校の冬休み、春休み時期に合わせて早朝枠で集中放映を実施。
大分放送日曜02:40枠で放映継続。
宮崎放送放映打ち切り。
南日本放送日曜06:15枠で放映継続。
琉球放送放映打ち切り。

ローカル編成への移行では、過渡期にいったん打ち切った後、数ヶ月の中断期間を挟んで放映を再開するケースもあります。
2006年9月に全国ネット(フジテレビ発・フジテレビ系、日曜19:00枠)が終了し、10月からローカル編成へ移行した『ONE PIECE』では、このパターンで放映を再開する局が散見されました。
以下のデータは、キー局と、いったん打ち切り後の再開した局を抜粋して掲載しています。

『ONE PIECE』の場合は、全国ネット枠終了の時点で継続予定がない局(下記4局や、結果的には10月から新規放映枠を設けた局を一部に含む)のラ・テ欄のみ、“[終]”マークがありました。

放映局2006年9-10月その後の経過
フジテレビ日曜09:30枠で放映継続。
山陰中央テレビ放映打ち切り。学校の冬休み時期に合わせて平日午後枠で集中放映を実施して再開(2006年12月)。以降は火曜16:25枠で放映継続(2007年1月より)。
テレビ愛媛放映打ち切り。学校の冬休み時期に合わせて平日午後枠で集中放映を実施して再開(2006年12月)。以降は土曜05:00枠で放映継続(2007年1月より)。
サガテレビ放映打ち切り。2007年4月より日曜09:30枠で放映再開。中断期間の回は未放映。
沖縄テレビ放映打ち切り。2007年1月より水曜16:00枠で放映再開。

地方局編(2) 全日枠の週遅れ放映について

全国ネット枠でない番組や、系列外の番組を週遅れ放映する場合には、よく“途中で打ち切り”の可能性がついて回ります。
毎回のストーリーが連続しているアニメの場合、話の途中で問答無用に終了するケースもあるようです。

テレビ東京やその系列局制作のアニメ番組を系列外で放映する場合には、キー局の番組スポンサーの意向で全国展開される場合と、各ローカル局が自前でスポンサーを見つけて放映する場合とに分かれます。
特に前者の場合、打ち切りは打ち切りでも、その「番組スポンサーの意向」によって系列外の局へのスポンサードを終了してしまい、結果的に多くの地方局で放映が終了するケースは、地方のアニメ事情を追っていれば定期的に見かけるおなじみのパターンと言えるでしょう。

今回は、週遅れ放映の打ち切りの中でも、そのような番組の全国展開からの打ち切りの事例を見ていきたいと思います。
2002年〜2005年にかけてテレビ東京で放映された、『わがまま☆フェアリー ミルモでポン!』シリーズのネット局の変遷を挙げてみました。

放映局無印ごおるでんわんだほうちゃあみんぐ
テレビ東京
地上波の系列5局
キー局同時ネットキー局同時ネット*1キー局同時ネット*2キー局同時ネット*3
BSジャパン週遅れ放映週遅れ放映週遅れ放映週遅れ放映
岩手めんこいテレビ週遅れ放映週遅れ放映週遅れ放映未放映
秋田テレビ週遅れ放映週遅れ放映週遅れ放映週遅れ放映
山形放送週遅れ放映週遅れ放映週遅れ放映週遅れ放映
テレビ金沢週遅れ放映週遅れ放映週遅れ放映未放映
長野放送週遅れ放映週遅れ放映週遅れ放映未放映
静岡朝日テレビ週遅れ放映週遅れ放映週遅れ放映週遅れ放映
奈良テレビ未放映週遅れ放映週遅れ放映週遅れ放映
日本海テレビ週遅れ放映週遅れ放映週遅れ放映週遅れ放映
広島ホームテレビ週遅れ放映週遅れ放映週遅れ放映週遅れ放映
四国放送週遅れ放映*4未放映
テレビ愛媛週遅れ放映週遅れ放映週遅れ放映未放映
大分朝日放送週遅れ放映週遅れ放映週遅れ放映週遅れ放映*5
鹿児島テレビ週遅れ放映週遅れ放映週遅れ放映週遅れ放映

典型的なパターンの一つとして、「シリーズを改めるのを機にネット拡大/縮小」というケースがあります。
『わがまま☆フェアリー ミルモでポン!』シリーズのような、子供向けの玩具商品展開を念頭に置いたメーカー(本作の場合は旧・TOMY)が主要スポンサーに付くテレビアニメは、1年の予定で制作開始されるものが多数を占めます。
系列局の少ないテレビ東京系で放映される場合、玩具メーカー等は全国展開を目指して地方局にもスポンサーに付くことがあり、中には『ポケットモンスター』『とっとこ ハム太郎』のように、他のネット系列に匹敵する規模で放映されるものもあります。

『わがまま☆フェアリー ミルモでポン!』はその中で、人気を得て放映が延長された作品です。
実際には各タイトルごとに放映期間が異なるのですが、この作品について詳しく知らない方は、「無印」〜「ちゃあみんぐ」をそれぞれ1年目〜4年目とお考えください。

1年目の番組の成功によって放映延長が決定し、系列外ネット局も引き続きネットされることになりました。(1年目の途中で既に終了していた四国放送を除く)
この際、ネット局に奈良テレビが追加されています。
放映を延長するほどの人気を得たことで、さらに展開の拡大を狙って、このように第2期からスポンサーが付き、放映開始されるケースは他の番組にも見られます。
『爆転シュート ベイブレード』等では、1年目には少なかった系列外ネット局を2年目に入ってから増やし、本格的に展開するようになりました。

そして、4年目に入る際に、今度は一気にネット局が縮小されています。
番組の人気がピークを過ぎたことで、TOMYはこの時、『ミルモでポン!』関連の玩具商品展開を見直しました。(“TOMY”の提供は続いたものの、一部の携帯機用ゲーム以外の『ミルモでポン!』関連玩具CMは姿を消しました)
それによって、従来のような広範囲で番組をネットする必要性が薄れたため、系列外ネット局へのスポンサードを一部取りやめ、これらの局では4年目を放映せずにシリーズが終了してしまったのです。
タイトルが分かれているので厳密に“番組途中での打ち切り”ではありませんが、キー局で同じ世界観のまま続いているアニメが終了する点で、“打ち切り”に極めて近いケースと言えます。